NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol.34 増税メガネと呼ばれて支持率低迷するわけ
投稿日:2023.10.20
他人をその容姿で詰ることは良い事ではありませんが、「増税」という形容詞には意味があります。それは財務省の言いなりになっているからです。
もともと宏池会は財務省(旧大蔵省)の官僚出身議員の集まりでした。つまり財政・税制のプロとしての見識を持ち、財務省の利益を代表しつつも、特に事務次官経験者のOBは省内に影響力を持っていました。それが宏池会の強みではあったのですが、現在33名の所属議員のうち、財務省出身者は4名で事務次官経験者はゼロです。
国益よりも省益を優先する財務省ですから、増税が好きで、減税が嫌いです。税金として財源を多く確保することによって、自らの権限を拡大します。ガソリン税にしても減税をせずに、上から目線で補助金を出します。また、赤字国債は確かに負債ではありますが、同時に資産も開示しなければバランスシートを正しく見ることはできません。
さて岸田内閣の支持-不支持率は、発足直後に43%-25%、そして2021年12月から2022年7月まで50%-25%を維持しましたが、安部元首相の国葬問題でケチをつけ支持率が不支持率を下回るようになりました。その後2023年の広島サミット前後では45%-35%まで回復しましたが、直後に息子の不祥事で再度不支持率が支持率を上回る事態になりました。
このまま解散せずに2024年秋の総裁選までズルズルと行けば、引きずり降ろされることが必至の状況なのでまずは内閣改造をしましたが、支持率-不支持率は30%-48%。焦った首相は経済政策を発表。税収増の還元と未来への投資、具体的には物価対策、賃上所得の控除、国内投資促進、人口減への対応、国土強靭化。本来自民党政調会長が政府に進言するのが筋なのに、勇み足で首相が会見。焦り以外の何物でもありません。
細田博之衆議院議長がこのタイミングで議長職の辞表を提出したのも、解散・総選挙を考えての行動だったのでしょう。慌てて自民党6者会談を開いて党内結束の確認をするなど、後手後手が見え見えです。税収上振れの15兆円を還元(減税)した上で、15兆円程度の補正予算を出せば良いものを金額についての言及がないのは財務省の意向かと勘繰りたくもなります。結果として支持率は回復することなく、臨時国会冒頭解散もできなくなっています。
秋の臨時国会で補正予算が成立したところで解散する可能性が高いのですが、補正予算の中身によっては政権浮揚にはつながらないでしょう。税収上振れが15兆円もあるので、高度成長期にやったように「成長減税」15兆円は必須です。現在需給ギャップが15兆円程度といわれているので更に15兆円の賃上げ対策をすれば失業率が下がり、悪いインフレから「経済成長」の波に乗れるのに。日本経済は雇用の7割、付加価値の5割を中小企業が担っています。中小企業対策を明確にすることが肝要なのですがね。
ぐずぐずしていると百田新党が台風の目になって、保守層の食い合いになり、岸田内閣ひとり負けという可能性もでてきました。色々な意見があることは賛成ですし、政党が増えることは選挙の際に選択肢が増えることなので歓迎すべきでしょう。ただ政局の流動化・不安定化は、ウクライナ・ロシア、中国、パレスティナ情勢から望ましくないことではあります。もっとも解散は総理大臣の専権事項なのでいつ解散になるのかはわかりません。