NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol. 27 日本株はまだ安い?!
投稿日:2023.06.16
日経平均株価はバブル期以降最高値を連日更新して33,000円も突破し、絶好調に見えます。上がったモノは必ず下がるので、どこかで下がるのでしょう。2023年3月末の日経平均株価は28,000円程度でしたので、2か月半で約20%の上昇となっています。
東京証券市場第一部は、外国人投資家の比率が3割程度といわれているので、海外の機関投資家の影響を強く受けます。そして彼らから見た株価は、常に為替と連動しています。円/ドルの相場は、長らく100円~110円/ドルで安定していましたが、2021年6月に110円を突破し、2022年4月には120円、同年9月には140円も突破し、現在は超円安の状況が続いています。
その時の為替レートが購買力平価と比較して合理的かどうかを判断するという考え方があります。有名な指数としてマクドナルドのビッグマック・インデックスというものがあります。それは、世界中にあるマクドナルドにおけるビッグマックの店頭価格を比較するというものです。
このインデックスは、発展途上国では比較的高額になり、中進国では比較的安価になるなど万能ではありませんが、少なくとも先進国同士の購買力平価と為替レートを比較する場合にはしばしば使われます。
アメリカでは$5.15 – ですが、日本では\450- です。ビッグマック・インデックスから見ると、「適正な」為替レートは88円/ドル程度ということになります。先進国の中で日本だけが長年デフレ状態にあったので、88円/ドルが適正とは思えませんが、精々100円/ドルが購買力平価からみた「適正な」為替レートでしょう。
別の見方をすると、日本はもはや先進国ではなく、中進国と言えるかもしれませんが、少なくとも現在は「超円安」であると言えます。現在の日経平均株価は、1ドル100円で換算すれば、33ドルということになりますが、実際の為替レートである140円で換算すると、24ドルということになり、どうみても割安であると言えます。ということは、現在の株価は当面下がる見込みが少ないと言えます。
これを裏付けるのが、ウォーレン・バフェット氏の発言です。かねてより日本株の割安感に着目し、今年4月には来日して、五大商社の経営陣と面会をしています。そしてその直後から商社株を大量に保有するようになりました。
3月末と現在の各商社の株価の比較は、下記の通りです。
三菱商事 4,700円⇒6,792円 45% up
三井物産 4,100円⇒5,446円 33% up
伊藤忠商 4,300円⇒5,613円 31% up
住友商事 2,300円⇒3,049円 33% up
丸紅 1,800円⇒2,400円 33% up
何れも日経平均を大きく上回る上昇率で、現在の株価を牽引するカタチとなっています。
日本株へのリスクのひとつは、台湾有事と看られていたので、年内の台湾有事の可能性は下がっているのかもしれません。それを裏付けるように偵察気球問題で延期になっていた、ブリンケン国務長官の訪中が実現しそうです。そうなると、最大のリスクは岸田政権による増税と植田日銀の金融引締めをいつやるかということになるでしょう。増税は景気後退、金融引締めは円高に直結するからです。
実質賃金の下落は問題ですが、物価上昇がこの先押さえ込めるかどうかにかかっています。物価統計は毎月出てくるのに、企業の賃金は年に一度の改訂なので時差があります。注目点は今年の夏のボーナスでしょうか?ここで上昇できれば、1-2年のうちに実質賃金も上昇し、ようやくデフレからの脱却が見えてくるでしょう。