NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol.33ふるさと納税について考える
投稿日:2023.09.26
10月からふるさと納税における制度が改正され、地方自治体への寄付額と返礼品の比率が厳格に50:50になり、また返礼品の産地に対する規制が厳しくなります。これを制度の改悪と捉え、駆け込み需要が煽られています。しかしこの制度自体に問題があります。
ふるさと納税の趣旨は、都市集中型社会における大都市の税収格差を是正することです。つまり大都市の住民が地方自治体に「寄付」をすると、寄付額が所得控除となり、所得税(国税)と住民税(地方税)が寄付控除される仕組みになっています。結果として大都市の住民が国に収める所得税と居住地で支払う住民税を地方自治体に支払うということです。財源は国税と大都市の得べかりし税収で、格差是正の名のもと国と大都市がその税収を地方自治体に差し出すことになります。
これに似た仕組みはもともと存在し、それは地方交付税です。この法律の立法趣旨は、地方公共団体の財源の偏在を調整することで、ふるさと納税とまったく同じです。ふるさと納税との違いは、大都市にある地方自治体の財源を使うかどうかという点だけです。
ふるさと納税の制度を財務省や総務省の立場から見れば、自分たちの徴税権限や再分配権限の縮小になるので面白くない制度ではあります。しかし、ふるさと納税全体の規模が約6,000億円であるのに対し、所得税の総額は30兆円なので全体の僅か2%の話です。ということで、ふるさと納税の犠牲者は大都市にある地方自治体ということになります。
ふるさと納税は、納税者がその使途を限定できるという点で地方交付税よりも優れていると思います。特に自然災害などに逢った地方自治体の復興支援やフクシマ応援などには非常に適していると考えます。しかし、ここに「地方創生」の名のもと、ふるさと納税の奪い合いが発生し、返礼競争になったことは、もともとの立法趣旨をゆがめることに繋がっています。
返礼品の転売禁止自体は、憲法で保障されている財産権つまり私有財産の処分に関する規制ですから、憲法違反です。しかしこのようなことが議論されるのは、返礼品に問題があるからです。返礼品に関しては一律に禁止するのが妥当だと考えます。
少子化問題は、大都市や地方に関わらず全国的な問題です。しかし待機児童など早急に手当てをしなければならない問題については大都市固有の課題で、ふるさと納税によって大都市にある地方自治体の税収が減少し、育児所の設置などに支障をきたしている現状からみれば、ふるさと納税の仕組み自体を考え直す必要があるでしょう。
さとXXとかXXナビとか専用サイトもあって既にビジネスになっているので、そこには”既得権益”みたいな問題もあるのでしょうが、事は国家運営の根幹=税金の問題です。