NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol 5 日本列島は連日猛暑に見舞われていて電力不足
投稿日:2022.07.22
日本の発電割合は、東日本大震災前の2010年と2020年を比較するとザックリと下記の様になっています。
カテゴリー別に2010(実績),2020(実績),2030(目標)の割合は、
天然ガスで29% 40% 27%、
石炭で28% 30% 26%、
原子力で25% 4% 21%、
再生可能エネルギーが9% 20% 23%
そして石油は9% 6% 3% と、なっています。
ザックリいうと、2020年は原子力発電所を止めて落ち込んだ発電量約20%ポイント分を天然ガスと再生可能エネルギーがそれぞれ10%ポイントずつ補っているという構図です。再生可能エネルギーによる発電は、パリ協定実現に向けた日本政府の2030年中間目標である23%に向けて順調に増えていると見えます。一方原子力発電所の割合は、政府目標で21%なので原発への依存度は本来「ほとんど変えない」というのが前提になっています。
そもそも日本の2030年中間目標については、パリ協定に批准した他の国からは「不充分」との評価を得ている目標なのですが、2020年の段階でその目標に近付くどころか逆行する形になってしまっていました。
こんな状況の中、ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月24日に始まってしまいました。未だに停戦、終戦などの着地点が見えない中、エネルギー価格、特に天然ガスの価格が高騰しています。欧州では天然ガスの価格は、この戦争とは関係なく2018-2020年の平均価格に対し、2021年ですでに3倍に達していたのですが、2022年1-6月には更に前年の2倍になっています。日本でも2020年1-6月の価格は前年比で約50%アップしています。そしてこの傾向は今後さらに続くと見られています。欧州は比較的ローコストでロシア産の天然ガスの供給を受けていましたが、これがストップし、世界中に買い付けにまわるとなれば、日本の調達コストが上昇するのは自明の理です。
発電方法による1KWあたりの発電コストは、ザックリと天然ガス14円、石炭13円、風力22円、ソーラー24円、原子力11+?円です。安全対策の費用を盛り込むと原子力はこれまで天然ガスと同程度でしたが、天然ガスのコストが今後2倍以上になることを考えると比較にならないと言えます。
そんな中、アメリカ、欧州、ロシア、日本で開発が進んでいるのが、SMR(Small Module Reactor = 小型モジュール原子炉)です。発電量は、火力の60万キロワット、大型原子炉の100万キロワットに対し、500-35万キロワットと最大でも火力の半分、大型原子炉の3分の1程度ですが、1.安全性、2.短い工期、3.核不拡散、4.水素も作れると言った点で注目されています。
もっとも小さいものは直径1m、長さ2mと、トラックや船でも運べるので離島や災害時の電源には有用です。原子力発電所は原子炉を冷却するために「電気が必要」なのですが、SMRはモジュール自体を水に沈めて運転できるので、この大いなる矛盾も解消できます。また、電気は貯めることができない上に、送電ロスによって3-6%も失われます。つまり使う時に、使う場所のそばで発電する必要があります。電線に使う銅の価格もこの2年間で約1.5倍になっていますし、超電導なんてコスト計算できませんね。ということは、既存の火力発電所内にSMRを設置すれば、簡単に原子力発電所に置き換えることが、論理的には可能でもっとも効率が良いということになります。
地球温暖化を抑えるためのパリ協定に立ち返るためにも、発電コストを抑え、電力不足を解消するためにも、そろそろ原子力発電所の再稼働について、話し合いを始めるべきではないかと考えます。日本は一旦合意形成ができれば一気に進むことができるのですが、世論の合意形成に長大な時間が掛かります。エモーショナルにならず、正しい判断をすることが一番大事なのですが、判断の正しさよりも判断のスピードが大事な場面はあると思います。ヒトは慎重に慎重を期しても間違いを犯す動物です。お役所の「過誤修正」という問題もありますが、間違えは直ちに修正すれば済むことではないでしょうか。
とは言え、地球温暖化の原因が温室効果ガス、特に二酸化炭素にあるのかどうか、実は未だに完全に証明されたわけではないというパラドックスもあります。そう言えば、最近スウェーデンの女の子をマスコミはあまり取り上げなくなっていますね。とりあえずは、節電でしょうね。