NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol. 6 マイナンバーカード普及に総務省は躍起になっていますが…
投稿日:2022.07.30
安倍元首相の暗殺は参議院選挙期間に応援演説の最中であったことから、民主主義の根幹を揺るがす許しがたい事件として、長く歴史に刻まれることとなると思います。事件の真相究明は現在も行われている捜査に委ねるしかないのですが、その参院選挙の投票所で民主主義とは何?と改めて思い起こされました。
投票日には指定の投票所に行っていつものように投票を済ませたのですが、いつも感じていた違和感が今回は特に大きく感じられました。それは、「本人確認」の方法です。投票所にはあらかじめ郵送された投票所入場券を持参し、受付で提出します。受付では選挙人名簿を照会し、「お名前を言ってください」と確認しますが、これだけでどうして本人確認ができましょうか。マイナンバーカードが100%普及していれば、そもそも投票所入場券自体も不要になります。
コロナワクチン第4回目の接種券が届きました。まだ4回目の接種は受けていませんが、これまで同様のフォーマットです。つまり接種を受けたあと、接種券の台紙にシールを貼って「接種済証」としているのです。第1回と第2回がセットで1枚、第3回と第4回はバラバラですから1枚ずつになります。都合3枚の「紙」を保存しなければなりません。
もちろんスマホ用に様々なアプリが用意されていて、そちらに本人が登録することによって接種済証を携行することができますが、マイナカードを主体に使えば、接種券そのものを発行する必要がなくなり、さらに接種済証も不要になります。これだけでも保健所の経済的、人的負担は大きく軽減されます。
総務省としては、2022年度末にマイナンバーカードをほゞ100%普及させたいという普及させたいと言う目標がありますが、6月末の普及率は約45%となっていて目標達成は非常に困難な状況です。そのため総務省は躍起になってキャンペーンを実施していますが、これは新規取得者に経済的なメリットを与えるというものです。実際にこのキャンペーンそのものの効果も期待薄である上に、すでに取得した人との不公平感を醸成しています。
マイナカードを取得することによるデメリットとして挙げられているのは、1)個人情報の漏洩リスク、2)セキュリティ体制への不信感、3)銀行口座との紐づけへの不安などで、これらはまさにエモーショナルなポイントです。
また、マイナンバーカードを取得しないと決めている人の意見としては、1)通知カードや運転免許証で間に合っている、2)必要と感じていない、3)何となく抵抗がある、といったところで、まさに情緒的としか言いようがない理由です。
マイナンバーカードがほゞほゞ100%普及することによってもたらされるメリットは、行政改革=お役所仕事の効率化=歳出の削減/同じ歳出で質の高い行政サービスの提供など、お役所にとってのメリットだけでなく、取得者にとってのメリットもある筈です。それを増やし、それを啓蒙することが肝要だと思います。
仕事柄これまでに約30か国を訪問していますが、携行型の身分証明書の類が国民の半数にも満ちていない国は皆無です。外国人として数年間居住すること、あるいは短時間滞在することでその国の国情をすべて理解することは不可能ですが、それらの国では日常身分証を携行すること義務付けられています。日本で一気に義務化ということは「自由」で「民主的」な国なので、なかなか難しいとは思いますが、マイナンバーカードは、政府が国民を管理するためだけのツールではなく、国民の「自由」と「民主主義」を守るために必要なツールである、という啓蒙が必要だと思います。お金をばら撒くのではなく。