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NISM コラム

お金にまつわるつぶやき

Vol. 8 お盆について考えてみます

投稿日:2022.08.13

8月15日前後は「盆休み」として都内は閑散とします。かつては多くの商店や飲食店がお休みとなりましたが、ホテルにあるレストランは「通常営業」でした。江戸っ子には帰省先がないので、子供の頃は普段近寄れない高級ホテルのレストランに連れていってもらうこともありました。「このまま田舎者が東京に戻って来なければ、通勤ラッシュも交通渋滞もなく、快適に暮らせる」と江戸っ子の親が変な誇りを持っていたのを覚えています。

労働集約型産業の場合、夏季休暇を従業員に一斉に取得させることが生産性を高めることに繋がると考えられていたので、高度成長期以降この時期に「盆休み」が定着したものと考えられます。そして多くの人々が故郷に帰省します。そこでは大家族が集まると同時にご先祖様も精霊として人間界に戻り「お盆」となります。

日本におけるお盆の起源は諸説あって実はよくわかっていないのではないかと思います。日本古来の祖霊信仰と関係があるという説もあります。旧暦の7月1日を釜蓋朔日として13日に迎え火、15日-16日に盆踊り、16日に送り火を行い祖先の精霊とともに過ごすという風習です。その間、精霊に食べ物などのお供えをしますが、それを盛る「盆」がお盆の語源という説もあります。この儀式と仏教(浄土真宗を除く)の盂蘭盆会が合わさったお祭りであるという説もあります。精霊流しや花火大会がこの時期に多く行われるのも関係がありそうです。

しかしお盆に似た風習は農暦(太陰暦)が残る台湾にもあり、農暦の7月を鬼月と言います。中国語で鬼は幽霊とか亡霊の意味ですから、鬼月は亡霊の月と言う意味で、冥界から亡霊がこの世に戻って来きます。そこで道教の廟や家々では7月15日の中元節に普渡という儀式をします。台湾の風習は多分に道教の影響が大きいと思われます。

仏教、ヒンドゥー教、道教で冥界の主とされているのが、閻魔です。そして日本では旧暦の1月と7月の16日に地獄の釜が開きます。閻魔を本尊としてお祀りする寺院では、その日に御開帳し、地獄絵図なども公開します。古くから正月と盆の16日は殺生を戒め、閻魔様をお参りする日とされていました。また、この時期を「藪入り」と言って奉公人に休暇を与えて帰省させるという習慣も古くからありますので、「盆休み」も高度成長期に始まったものでもなさそうです。

盆暮れ勘定という言葉があります。現在決済は月次で行われますが、バブル景気が始まる1980年頃までは「盆暮れ勘定・節気払い」という慣習が残っていました。いわゆる二季払いという決済方法で、売掛金の支払いが盆と暮の2回だけという今では考えられないようなのんびりしたシステムです。

今からおよそ300年も昔に世界初の先物取引市場が大阪・堂島にできましたが、金融取引先進国の日本に盆暮れ勘定がその後250年も残っていたというコントラストが面白い。しかし、先物市場も盆暮れ勘定も「信用」がなければ成立しないシステムなので、日本は「信用大国」であったと言えます。帰省先がない江戸っ子はお盆にこんなことを考えています。

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