NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol. 13 もはやガラパゴス化した日本の金融政策どうする?
投稿日:2022.09.17
モーレツなドル高/円安が進行していますが、これは日米の金利差によるものです。そして7月には欧州中央銀行がゼロ金利政策をやめ、9月にはインフレ、失業、倒産などのリスクを認めた上で、更に政策金利を引き上げました。これによって日本円は対ドルだけでなく、対ユーロも含め全面安の様相になってしまいました。
これに対し財務相は、為替介入するとかしないとかわけの分からないことをぶら下がり取材で答えていますが、根本的な金融政策の見直しが迫られています。「事態の推移を見守りながら検討します」など、岸田内閣の手許には対策がなさそうです。
巷では、「即刻、量的緩和を止めてゼロ金利政策を転換すべき」、あるいはそれに対して「今金利を引き上げれば、多くの中小企業が倒産し、大量の失業者を出してしまう」など反対の意見も出ていて、恐らく政権内部でも良案はないのでしょう。
現在の日本の置かれている為替状況は、もともと第二次安倍内閣が実行したアベノミクスという政策に起因しています。従ってアベノミクスを盲目的に継承するのではなく、総括しない限り、この状況を脱却する手立ては見えて来ないと思います。
アベノミクスの目玉政策のひとつが「金融緩和」で、それによって2年程度で物価上昇率2%を実現し、失われた30年…デフレを脱却させるはずでした。お金をたくさん刷って市場に出せば、お金の価値が下がって物価が上昇するというかなり安直な政策です。しかし欧州などでは金融緩和が先行していたので、この時点で「金融緩和」は先進国のトレンドではありました。
そして2013年に日銀総裁に黒田氏が就任し、2015年までには目標を達成する予定でしたが達成できませんでした。この時点で日銀総裁更迭を含めた、政策の転換が必要だったはずです。
2015年に物価上昇率の目標を達成できなかった要因として円高や原油安などを挙げていて、消費税の増税についての影響は織り込み済みだったとしていますが、結果的には消費税増税を甘く見ていた結果です。消費税は2014年4月に5%から8%に上げられた結果、3月末までは駆け込み需要で回復したかに見えた景気が、4月以降一気に落ち込みました。物価上昇率はマイナスに転じました。
そして2015年10月に予定していた8%から10%への消費税増税は、2019年10月まで延期しなければならなくなりました。その間「コミットメントこそ命」と、何とかの一つ覚えの様に「異次元の緩和」を推し進めました。結果として日銀の国債保有残高は500兆円を超えています。今金利を上げて困るのは、中小企業だけでなく利払いに追われる日銀そのものです。
アベノミクス失敗のもう一つの原因は、「戦略なき成長戦略」です。たくさん刷ったお金は個人金融資産2,000兆円として銀行に眠っています。理由は「戦略なき成長戦略」、つまり将来に明るい展望を見いだせない国民は貯蓄に走ったのです。
デフレからの脱却ができないまま、通貨安、悪性インフレに陥った原因は、異次元の金融緩和と消費税増税のタイミングの悪さです。そして政府・日銀だけでなく、旧民主党、自民党、公明党も消費税増税に対して甘い見通しを持っていたためでしょう。ヒトは間違いを犯すモノですが、過ちはすぐに認めて修正なり訂正することが大事だと思います。
消費税増税の時にあまり議論されませんでしたが、直接税と間接税のバランスを見直すべきだったと思います。つまり消費税を増税する時に個人所得税の減税をセットで行えば、消費税増税後の個人消費の落ち込みを抑えられた可能性があったと思っています。しかし与党も野党も今の政治家は次の選挙の事しか考えられないので、長期的・戦略的政策は出て来ないのでしょう。衆愚政治は国の弱体化しか招かないことを考える良いチャンスだと思います。