NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol. 25 本当の子育て支援策は〇〇だ!
投稿日:2023.02.22
検討使岸田内閣は「異次元の子育て支援策」を実施すると宣言しましたが、例によってその具体策は「検討中」です。そんな中、SNSなどで市民の声を集めて国や自治体などに提言をしている民間団体「みらい子育て全国ネットワーク」が、Twitter上で「#異次元の子育て支援策 王座決定戦」を実施しています。
方法論としては、まずアイディアを募集し、30ほどに集約し、更に8つの政策にまとめました。そしてその8つの政策を4つのグループに分けてトーナメント形式で戦わせてもっとも有効と思われる政策、あるいは市井の人々が本当に求める政策を提言することのようです。8つの政策と準決勝までの結果は以下の通りです。
1)全ての所得制限を撤廃 2)一人産んだら1000万給付 3)専門職員の待遇改善 4)子育て家庭の残業転勤原則免除 5)全員6時間勤務 6)N分のN乗方式導入 7)明石の泉市長を総理に! 8)小中高大全員無償化1回戦では以下の4つの政策が選ばれました。
1)全ての所得制限を撤廃 3)専門職員の待遇改善 5)全員6時間勤務 8)小中高大全員無償化そして2回戦では1)全ての所得制限の撤廃と8)小中高大全員無償化が選ばれ、これら2つが決勝戦で戦うことになりました。8つの政策はどれも子育て支援には必要と思われる政策ですが、なぜ人口減少化が起こっているのかといった問題の本質には迫っていないと思います。人口減少=出生率の低下の原因はたくさんあります。ヒトを動物として考えると、男女両性の中性化という問題もありますし、高度に進んだ高齢化によって子育てよりも親世代への支援、介護が増加しているということもあります。
しかし本当の問題は「20世紀的核家族化」がもっとも深刻な問題だと考えます。核家族とは夫婦とその未婚の子どもからなる家族のことであると、定義されます。縄文時代から日本では三世代以上の大家族よりも核家族の割合が多い社会であると言われていて、核家族は日本の、あるいは人類普遍の家族形態とも言われています。
ところが、昭和の戦後高度成長期以降の核家族と戦前までの核家族ではその本質が違います。戦後は大都市への人口集中がもたらしたもので、都市の核家族とその親世代の家族は地方と大都市というように遠く離れて暮らしています。他方縄文時代から戦前まで綿々と続いた核家族は、形態は核家族であってもそのほとんどは、近所あるいは同じ地域で暮らしていたわけです。つまり戦前は核家族であっても疑似大家族のように相互扶助がし易い環境にあったと言えます。
人口減少対策の本質は子育て、特に乳幼児などの未就学児から少なくとも義務教育を終えるまでの「子育て」を物心両面から支援することです。パリ市では30年以上もむかしから、子育て中の女性は週休2.5日が実施されていました。企業は毎週水曜日の午後、女性職員を「家庭に返さなくてはならない」という法律(条令)によるものでした。
就学児については「学童クラブ」や「キッズクラブ」などすでに支援が始まっていますが、ここに「異次元の支援」をして拡充を図り、習い事や学習塾などを高度に組み合わせることが重要でしょう。
しかし本当の問題は乳児を含む未就学児です。保育所の拡充、待機児童の解消などが進んでいますが、量だけの問題ではなく、質が問われています。もっとも重要な質とは利便性です。朝、通勤前に駅とは反対方向の保育所に子どもを預け、夕方は買い物もそこそこにまず保育所に子どもをむかえに行く。
鉄道会社は沿線開発として、マンションや戸建て住宅を販売し、駅にはテナントとしてスーパーマーケットなどをテナントとして誘致しています。それはその鉄道を利用するひとの利便性を高め、乗客を増やすためです。それであるならば、その駅舎や駅ビルに保育所がなぜこんなにも少ないのでしょうか。異次元の支援と言うのであるならば、すべての駅舎、駅ビルに利便性の高い保育所を設置することでしょう。これが子育て世代に寄り添った対策です。子育てにお金がかかるのは事実ですが、バラマキは止めましょう。