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Vol. 28 CO2だけが悪者でEV車だけが正義か?

投稿日:2023.06.20

Vol. 28 Co2が本当に悪いの?EV車が正義?

 世界は環境保全、特に地球温暖化解決のためにCo2排出制限へ舵を切っていますが、地球温暖化の原因が本当にCo2なのでしょうか。地球温暖化はオゾン層の破壊の結果であり、その原因はCo2なのでそれを削減しようという論法でした。

 確かに最近は、Co2は減少し、その結果オゾン層も修復されています。しかし地球温暖化や環境破壊、異常気象や海水面の上昇は、改善されていません。これは地球温暖化の主たる原因がオゾン層の破壊でもなく、Co2だけが悪者というわけでもないのではないでしょうか。

 声高に環境保全と叫んでいる割には、人類全体として真剣に環境問題に取り組んでいるようには思えません。もはや明らかなように環境問題は、ビジネス=投資の対象でしかないように見えます。

 各国が環境保全を推進する裏で、熾烈なビジネスの戦いが背景にあるのでしょう。Co2削減では、ガソリン車がやり玉に挙げられ、欧州はディーゼルに、トヨタ(日本)はハイブリッドにその活路を見つけようとしました。結果としてディーゼルは期待された結果が出せずに、偽装という形で欧州勢は敗北しました。

 そこで欧州勢はハイブリッドに対抗して、一気にEV車にシフトしました。あと何年かすると内燃機関を使う自動車は「先進国」で販売できないような法整備が進んでいます。しかしそれは現実的に可能なのでしょうか?

 EV車は走行しているクルマからはCo2を排出しないので、ゼロ・エミッションと言っていますが、充電に使う電気は日本の場合、約75%が天然ガス、石炭、石油を使った火力発電です。発電所では毎日大量のCo2を発生させているので、EV車だからといってゼロ・エミッションとは言えないでしょう。また、EV車といえどもクルマを生産する時には大量のCo2を発生させています。

 アメリカに限った話としても2030年までに連邦政府のCo2削減目標を達成するには、公共の充電スタンドが120万か所も必要だという試算があります。これは充電に8-30時間も掛かるためで、給油であれば10分以内です。そのためガソリンスタンドの10倍近い数の充電スタンドが必要ということです。

 また、全車両をEV車に置き換えるためには、膨大な量のバッテリーを製造しなければならないのですが、生産する工場はまだありません。さらに、そのバッテリーを製造するためには、希少金属の鉱山を新たに300か所見つけなくてはならないという試算もあります。

 つまり2030年とか2035年とかに設定されている、全車EV化ということは、非現実的だと思います。また充電時間の長さだけでなく、動力源としても、冬の幹線道路での立往生を見れば明らかなようにEV車はまだまだ発展途上の産物です。

 ハイブリッドなど現実的なソリューションを繰り出すトヨタは、EV車だけに注力しない会社と見做し、環境保全に消極的だという理由で、環境系の投資ファンドから攻撃の目標になっています。営業収益の最高値を更新しているにもかかわらず、株価は低迷し豊田会長(社長)も個人として攻撃にさらされています。

 6月14日の株主総会では、環境保全対策と会長自身の取締役再任拒否に出ました。その対策として、6月13日に「全固体電池EV」を発表しました。1回10分の充電で1,200 km も走行できるという夢の様な新技術です。この発表によって株価は前日の2,000円から2,200円と、一日で10%も上げました。

 残念ながらこの技術はまだ「夢」のようなので、株主総会でも詳しい説明がなかったのは別の意味で残念ではあります。現実主義ではなく理想主義、理念先行の環境派投資ファンドに夢の様な技術=理念で対抗する目的だったのでしょう。

 先進国にとって自動車産業は各国の基幹産業であり、経済的にも政治的にも守る対象です。各国は日本車を締め出すことによってその活路を見出そうとしていますが、現地生産を進める日本メーカーが撤退を表明し、締め出した各国は反対に経済的損失と失業者の増大という矛盾を抱えています。

 まったくもって視野の狭い、理念先行の投資ファンドが仕掛ける矛盾したビジネス戦争といえましょう。ただ、個人的にはトヨタ車は、特にそのデザイン面においてまったく評価できません。どこかのモノマネかガンダムしかないのですから。

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