NISM コラム
お金にまつわるつぶやき
Vol. 20 防衛費増額賛成、増税反対!
投稿日:2022.12.15
連日ウクライナの戦況が報道され、国防に関する国民の意識が盛り上がっているのは確かです。実際にロシアはウクライナに侵攻する数カ月前まで日本への侵攻を考えていたとのロシア連邦保安庁(FSB)の内部文書がリークされました。
これが真実なのかフェイクニュースなのかはわかりませんが、ウクライナに侵攻する「理由」がただ単に「自国が侵略される危機にある」というほとんど言いがかりのようなことですから、あながちフェイクだと言い切れないものがあります。
ウクライナ戦争の始まる随分前から日本は周辺国による侵略の危機にあるといえます。その危機がより大きくなったのは、民主党政権時代の2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件です。尖閣諸島の領有を一方的に主張する中国が日本の領海で漁船に操業させ、その違法操業を取り締まった海上保安庁の巡視船に体当たりをして巡視船を破損させた事件です。
海上保安庁は直ちに漁船の船長を公務執行妨害で身柄を逮捕しましたが、民主党政権は最終的には乗組員、船長、漁船などすべての証拠、逮捕者を無条件で中国に返還してしまいました。これは中国が一方的に主張する「尖閣諸島は中国の領土」を半ば認める形になってしまい、それ以後は毎日中国の軍船、漁船を問わず領海侵犯を繰り返されているだけでなく、領空にも中国の戦闘機が飛び交う様になってしまいました。
また中国は経済発展にともない、その軍事費は時にはGDP成長率を上回る伸びを示しています。2011年には約10兆円であったものが、2021年には20兆円を超えています。しかもこの額には海外から購入した武器等の金額が含まれていません。こうして軍事費が大きくなり、武器、装備などが充実してくるのにともなって、野心もまた膨らんでいます。
そして今年10月に開催された第20次中国共産党全国代表大会で、習近平国家主席が異例の重任となり三期目に入りました。ここで台湾統一への攻勢を強めるとの発言があり、台湾海峡が一段とキナ臭くなってきました。中国軍が海上から台湾を封鎖するためには日本の領海を通らなければならないからです。つまり中国が台湾に武力侵攻をすれば、日本は必ず巻き込まれることになります。
もう一つは北朝鮮です。2022年に入ってロケット、ミサイル、巡航ミサイルの発射実験を加速させています。ウクライナ侵攻によって極東地域のロシア軍=援軍が手薄になったことを警戒し、米韓軍事訓練に敏感になっているためと考えられます。また、親北朝鮮政策を採っていた文在寅政権から尹錫悦政権に替って、心中穏やかでないのかも知れません。
北朝鮮は年明けには核実験も行う見通しです。今回のウクライナ戦争ではっきりしたことは、「核の傘」は幻想であったということです。独自に核開発を続け、実質的な核保有国になったインドや北朝鮮、そして核保有が認められている常任理事国は、いかなる戦争・紛争に対し「中立」でいられることが証明されました。反対にドイツは対ロシア投資が大きかったこと、ロシアへのエネルギー依存度が突出していたため、大きな「負担」を強いられています。
この国防への国民の関心が高まりを見せている中、11月30日防衛省は来年度予算の防衛費概算要求を出しました。5兆5千億円と2022年度並ではありますが、概算要求には具体的な金額のない項目があるので、最終的には6兆円を超えると見込まれています。(つづく)